ジャズも人生も一瞬一瞬が勝負

目安時間:約 6分

連日メディアを賑わせている日野さんの虐待報道。

 

 

 

 

 

ジャズミュージシャンとして、コーチとしての

見解を発表したいと思います。

 

 

僕は日野さんと何度もあったことがありますし、
セッションもしたことがありますし、日野さんの
バンドメンバーなどもよく知っている人が沢山います。

 

なので、日野さんの人となり、音楽観なと知っている
つもりで話を進めます。

 

と言うか、こんなことを知らなくても
今回の報道は、何がポイントかすぐに分かります。

 

ジャズの世界のことなので、気になって
テレビやネットで今回の報道を観ました。

 

テレビ放送された問題の動画には日野さんが
中学生ドラマーに投げかける言葉も録音されていました。

 

日野さんが中学生ドラマーのドラムスティックを
取り上げたあと、まだ手で演奏を続けようとしたため、
日野さんは髪の毛を鷲掴みにして頭を振り回します。

 

 

そして、こう言いました。

「みんなでやってるんだよ!

おまえのバンドじゃないんだよ!」

 

この発言で、この話の本質はわかるはずです。

 

 

このステージは、4ヶ月かけて本番に向けて
リハーサルを繰り返して来たビッグバンドのコンサートです。

 

 

言わば、仲間たちと作り上げて来たバンドの
集大成がこのコンサートです。

(※因みに、バンドを指導する講師陣もよく知っている人が沢山います。
なので、このイベントがどんなものなのかは以前から聞いていました。)

その晴れの舞台で、勝手な行動をされたら誰でも怒ります。

 

 

ジャズは一瞬一瞬が勝負です。

 

 

流れを読み違えたら、それまでいい雰囲気で演奏が
進んでいても、たちまちつまらない演奏に変わってしまいます。

最初から最後まで全身全霊で持てる集中力を全て使って演奏します。

そして、つまらない演奏をしてしまうと、次はないのです。

 

教育という面が強いこのイベントですが、ジャズを
扱っている以上、こうした演奏に対する責任は全員が担います。
無責任に「誰かについていったらいい」というマインドでは
ジャズは決して良い演奏ができません。

 
神輿を担ぐように全員の力を結集して、演奏をしていくものなのです。

 

そして、日野さんは何十年にも渡ってこの厳しい世界で
トップを走り続けて来ました。

 

僕は日野さんの演奏をたくさん聴いてきましたが、、

つまらないと思ったことはただの一度もありません。
毎回のように、
「すげー!!!」と唸らされます。

 

演奏中、他のプレイヤーの演奏を止めたり、いろんな指示を
しますが、それが間違っていると思ったことは一度もありませんでした。
なぜなら、そうした指示をした後、必ず演奏が面白くなるからです。

 

日野さんはバンドのサウンドをただ正直に聴いて、感じて、
邪魔だと思う音をとめる、面白いと思ったことを膨らませていく、
それを繰り返しているだけです。

 

おそらく中学生ドラマーの演奏は、その場の演奏にとって
「邪魔な音」だったのでしょう。

 

もちろん、ある程度教育という立場から、多少のわがままを
受け入れたりして猶予はもたせたでしょうが、それも限界に達して、
スティックを取り上げることになったと思います。

もちろん、中学生も必死に「良い演奏」をしようとしたのでしょう。

 

 

しかし、それが常にうまくいくとは限りませんし、
他のメンバーに迷惑をかけるのは「若気の至り」「抽象度の低い行い」です。

まだ成長過程にあると思いますし、これも経験だと思います。

 

因みに僕自身、若い頃、そういった「低い抽象度の演奏」を
することがありました。
そして、先輩たちからたくさん怒られました。

 

しかし、そういった経験がとてもありがたかったな、
と心から思って感謝しています。
そうした、「愛のムチ」のおかげで今があります。

 

「暴力」という手段を取らざるを得なかったのは残念でしたが、

ステージはミュージシャンにとって生き死にがかかる、
神聖であり命を削って自己を表現する場です。

 

 

トップミュージシャンほど、このことが骨身にしみていますから、
変なことをしたら、殴られる蹴られるくらいのことは起こり得ます。

 
スポーツもそうでしょう。

 
親子関係もそうでしょう。

本気のぶつかり合い無くして、いいものは生まれません。

本当の意味での「学び」になりません。

そういう意味で、今回のことは多くの人が考えさせられる
報道だったと思います。

 

この報道を通じて、表面的なことに終始せず、視点が高く
なる人が少しでも増えることを心から願っています。

 

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